独学でフリーランスWEBデザイナーになって3年半ほど経ち、実績もそれなりに出来てきた僕の悩み。それは公開できる実績が無いこと。
これまでクライアントに「貴社サイトを実績として公開しても良いですか?」と営業活動をしてこなったので、ポートフォリオに載せられる実績が架空サイトだけなのです。
こんな状況でもありがたいことに案件の受注はできている訳ですが、3年半もやっていると少しは欲しい。箔(ハク)が欲しい!
そんなフワッとした動機ではありますが、ウェブデザイン技能検定2級を受検して無事に合格しました。
今回の記事ではウェブデザイン技能検定2級を受検した感想と、これから受検する予定の方へ向けて学科試験・実技試験の対策方法についてご紹介していきます。
この記事を書いた人
DoGgy(2級ウェブデザイン技能士)
30歳で大手メーカーの営業マンを辞めて未経験からWeb制作を独学。現在は在宅フリーランスとして月平均50万円稼いでいます。
当ブログでは「在宅ワークの初め方」や「Web制作」について発信中!
ウェブデザイン技能検定とは?
ウェブデザイン技能検定は、特定非営利活動法人インターネットスキル認定普及協会が実施する、ウェブデザイン関連において唯一の国家資格です。
「ウェブデザイン」技能検定という名称ではありますが、いわゆるデザインセンスを測るものではなく、コーディングをはじめとしたWEBサイト制作全般に関する知識を問われます。
難易度に応じて1級・2級・3級に分かれており、学科(筆記)試験・実技試験の両方に合格すると「○級ウェブデザイン技能士」の称号が与えられます。
受験資格
各級に受験資格が設けられており、最低でも以下のいずれか1つを満たしている人でなければ受検できないルールになっています。
1級
【実技試験】
・1級の技能検定において、学科試験に合格した者(※1)【学科試験】
・7年以上の実務経験(※2)を有する者
・職業高校、短大、高専、高校専攻科、専修学校、各種学校卒業又は普通職業訓練修了(※3)後、5年以上の実務経験(※2)を有する者
・大学(※3)卒業後、3年以上の実務経験(※2)を有する者
・高度職業訓練修了(※3)後、1年以上の実務経験(※2)を有する者
・2級の技能検定に合格した者であって、その後2年以上の実務経験(※2)を有する者2級
・2年以上の実務経験(※2)を有する者
・職業高校、短大、高専、高校専攻科、専修学校、各種学校卒業又は普通職業訓練修了(※3)した者
・大学(※3)を卒業した者
・高度職業訓練(※3)を修了した者
・3級の技能検定に合格した者3級
・ウェブの作成や運営に関する業務に従事している者及び従事しようとしている者※1:当該実技試験が行われる日が、学科試験の合格日より2年以内である場合に限る。
受検資格 – ウェブデザイン技能検定
※2:実務経験とは、ウェブの作成や運営に関する業務に携わった経験のことである。
※3:学校卒業、訓練修了については、卒業あるいは修了した該当科に協会が定めたウェブの作成や運営に関する科目等が含まれると協会が認めたものに限る。
ご覧の通り3級はだれでも受験可能ですが、試験の難易度が低めなので取得してもクライアントや就職先へのアピールとしては弱いかもしれません。
初心者の方が基礎学習の一環として受検するのであればとても有意義だと思いますが、実務経験者の方は初めから2級以上の取得を目指すことをオススメします。
出題形式
出題形式と合格基準は全等級共通で以下のようになっています。
試験日程等 – ウェブデザイン技能検定
出題形式 合格基準 学科 筆記試験(マーク方式):
「多肢選択法」「真偽法」形式70点以上(100点満点) 実技 課題選択方式 70点以上(100点満点:ただし、試験要項に示す各作業分類において配点の60%以上の得点を得ること)
僕が受験したウェブデザイン技能検定2級では、学科試験は全部で40問。
うち15問が正誤問題(2択)、残り25問が4択問題になっていました。
また実技試験は会場に用意されたパソコンを使用して、問題の指示通りにWEBサイト制作を行います。
試験時間
試験時間は等級によって異なり、それぞれ以下の通りです。
試験日程等 – ウェブデザイン技能検定
1級 学科90分 実技180分 ペーパー実技60分 2級 学科60分 実技120分 3級 学科45分 実技60分
受験申請方法
試験は年に4回行われ、期間中にインターネット申請または郵送申請で受験申請を行います。
興味のある方はウェブデザイン技能検定公式サイトで詳細を確認してみてください。
ウェブデザイン技能検定 2級を受検した感想
冒頭で述べたとおり、箔(ハク)欲しさで受験したウェブデザイン技能検定2級ですが、結論から言うと箔とか関係なしに受験して良かったと思っています。
自分で言っておいてなんですが、箔ってよくわからないですし。笑
正直にいうと受検する前は「3年半もコーディングしてるし余裕でしょ!」とか、「ちゃんと実務で役にたつ知識とかあるのかなー?」とかナメたことを考えていました。
だけど試験対策をする中で「今まで知った気になっていたが実は理解できていなかったこと」が多いのだと痛感。
今まで目を背けてきた部分や、1人で作業しているだけでは得られないような気付きに触れたことで、WEBデザイナーとしての自信が付いたと思います。
受検して良かったこと
ウェブデザイン技能検定2級を受験して良かったと思っている理由は以下の3つです。
- HTMLマークアップのスキルが上がった
- ウェブデザインの基礎となる知識を体系的に学び、自信が付いた
- JavaScriptの面白さに目覚めた
① HTMLマークアップのスキルが上がった
SEO効果を高めるためにHTMLタグを使い分けてサイトの構造をブラウザに伝えることを「マークアップ」と言いますが、ウェブデザイン技能検定2級の受検をきっかけに多くのマークアップ要素を学びました。
突然ですが、HTMLの仕様書の下記文言をご存知でしょうか?
他の要素が適切でない場合、著者は最後の手段の要素としてdiv要素を検討することを強く推奨する。
HTML Standard 日本語訳
つまり「div要素は他にふさわしい要素がない場合の最後手段として使用する要素である」とされていて、それだけ数多くのマークアップ要素があることを意味します。
自分は最低限のマークアップは出来ていると自負していたのですが、ウェブデザイン技能検定2級の過去問題を見て愕然。
あれ?こんな要素もあったの?のオンパレード。
今までの自分のマークアップスキルの低さを反省しつつ、それらの要素についての意味・使いどころ・記述方法を学習するきっかけとなりました。
ちなみに印象的だったのは以下の要素たち。
<dialog> ・・・ モーダルなどのダイアログボックスを実装
<details> ・・・ アコーディオンを実装
<datalist> ・・・ フォームの入力欄に入力項目のリストを表示
今までJavaScriptで実装していた要素がHTMLで実装できて、かつ意味付けもできるなんて素敵すぎる!
そんなこんなで一喜一憂しながらコーディングスキルの底上げができました。
② ウェブデザインの基礎となる知識を体系的に学び、自信が付いた
白状します。(安西先生風)
僕はこれまでWEBサイト制作の基礎となる知識についてちゃんと学んでおらず、「そのうちしっかり学べば良いか」と必要になったタイミングで都度ググりながら業務を行っていました。
- インターネットの仕組み(プロトコル・HTTPリクエスト・ポート)
- セキュリティ関連(不正アクセス・マルウェア)の傾向・対策
- 法律(著作権・個人情報保護など)
- ユーザビリティ・アクセシビリティに考慮したWEBサイト作り
これらは全てウェブデザイン技能検定2級の出題範囲に含まれていますが、具体的に何を勉強すれば良いのかわからない状況だったので、参考書を購入して1から勉強することに。
体系的に学べたので知識として落とし込みやすく、今まで「ここは”A”だな」とだけ覚えていたことが「なるほど、”B”が”C”だから”A”になるのか」と、目からウロコの知識が目白押しでした。
今まで目を逸していた分野と向き合ったことで、WEBデザイナーとしての自信もついたと思います。
③ JavaScriptの面白さに目覚めた
以前JavaScriptを学習したときは早々にjQueryに移行したので、実はJavaScript本体に薄っすらと苦手意識を持っていました。
しかしウェブデザイン技能検定2級ではJacaScript本体の出題がメインなので、この機会に改めて学習し直すことにしたんです。
その結果、JavaScriptの面白さに目覚めました。
ついでにNode.js(JavaScriptをサーバーサイドで使えるようにするプラットフォーム)にも興味が出てきてしまい、試験とは無関係にNode.jsでアプリを作成する勉強を始めることに。
これは僕自身も予想していなかった展開ですが、キャリアアップの予感を感じており、ウェブデザイン技能検定2級を受検して一番の収穫だったと言えるでしょう。笑
学科(筆記)試験の対策方法
ここからはウェブデザイン技能検定2級を合格するための試験対策方法をご紹介します。
ここ数年、実技試験は過去問題とまったく同じ問題が繰り返し出題されているので後回しで構いません。まずは学科試験の対策に取り掛かりましょう。
学科試験は全部で40問出題され、うち15問が正誤問題(2択)、残り25問が4択問題になっています。
また細かく確認はしていませんが、過去問題と同じ問題が全体の40〜50%ほど出題されている印象です。
したがって、合格基準の70点(28問正解)を達成するために以下を目標にしましょう。
- 過去問題に出てきた問題は絶対に間違わないようにする
- 初見の問題にも6割以上正解できる知識を身につける
公式サイトから過去問題をダウンロードし、繰り返し解きまくりましょう。
間違った問題に関しては、出てきた単語の意味をネットで調べてノートに纏めておきましょう。しっかり知識として定着させておくことが大切です。
過去問題に出てきた問題を全て正解できるようになれば本番でも40〜50点は取れるようになるはず。しかし合格ライン70点までには30点ほど足りません。
初見の問題で30点以上取るためには、ウェブデザイン技能検定 2級の出題範囲を一通り学習する必要があります。
ちなみにウェブデザイン技能検定2級の出題範囲は以下の通り。
■ 学科試験
1.インターネット概論
1-1.インターネット
1-2.ネットワーク技術
1-3.インターネットにおける標準規格・関連規格と動向
1-4. ウェブブラウジング
1-5. ワールドワイドウェブ(WWW)セキュリティ技術
1-6.インターネット最新動向と事例2.ワールドワイドウェブ(WWW)法務
2-1.知的財産権とインターネット
2-2.インターネットに関わる法令等3.ウェブデザイン技術
3-1. ハイパテキストマーク付け言語および拡張可能なハイパテキストマーク付け言語(HTML・XHTML)とそのコーディング技術
3-2.スタイルシート(CSS)とそのコーディング技術
3-3.スクリプト
3-4.サーバサイドアプリケーション4.ウェブ標準
5.ウェブビジュアルデザイン
5-1.ページデザインおよびレイアウト
5-2.マルチメディアと動的表現6.ウェブインフォメーションデザイン
6-1.インフォメーションデザイン
6-2.インタフェースデザイン
6-3.ユーザビリティ
6-4.各種データベースとの連携によるダイナミックなサイトデザイン7.アクセシビリティ・ユニバーサルデザイン
8.ウェブサイト設計・構築技術
9.ウェブサイト運用・管理技術
10.安全衛生・作業環境構築
■ 実技試験
技能検定「ウェブデザイン」の試験科目及びその範囲ならびにその細目
ウェブサイト構築
・ウェブサイトデザイン
・ウェブサイト運用管理
結構広いですよね。僕が初めてこれを見た時は、
- 具体的になにを勉強したら良いんだ?
- なにから手を付けよう?
と悩んでしまったので、教材を購入して学習することにしました。
学科試験の対策に使用した教材
僕がウェブデザイン技能検定2級を学習するために使用した教材は以下の3つです。
① ウェブデザイン技能検定2級 ガイドブック(ウイネット)
ウェブデザイン技能検定2級に出題される内容が1章〜9章に分けて解説されているので、一通り読むだけで出題範囲と学習すべき内容が明確化します。
ちなみに2023年2月時点でウェブデザイン技能検定 2級の参考書と呼べるものはこれしか無いかも。
全体的に説明があっさりとしていて、詳しく理解するために自分でネットで調べる必要がある部分はありましたが、付録のウェブ問題集もかなり役に立ったので購入して良かったです。
Amazonに商品ページはあるものの在庫が無かったので、僕はウイネットの公式サイトで購入しました。
② JavaScriptコードレシピ集(技術評論社)
試験対策用の本ではありませんが、JavaScriptの文法やメソッドが読みやすく纏められているので、試験対策で非常にお世話になりました。
過去問題に出てくるJavaScriptのコードを読み解く問題で、わからなかったメソッドを調べる際に使いましたが、欲しい情報がパッと見つかるので助かりました。
普段の業務でもガンガン使えるので、JavaScriptに自信がないという方にオススメです。
③ Progate
これまで未習だったSQLの学習のためにProgateを活用しました。
SQLはこれまで一度も触ってきていなかったので不安でしたが、ProgateのSQLコースを一通りクリアしたらウェブデザイン技能検定2級に出題されるSQL関連の問題はばほぼ回答できるようになりました。
JavaScriptやPHPの基本を復習したいという方も活用できると思います。
試験当日までの勉強の進め方
参考になるかわかりませんが、僕の試験日までの勉強の進め方についてもご紹介します。
- 7週間前ウェブデザイン技能検定2級 ガイドブックを購入
出題内容を把握するために最初から最後までパラパラと読む
- 6週間前過去問題を解いてみる
想像より難しく、このままでは合格ラインに届かないことを自覚
まずは不安が残るJavaScriptとSQLの学習をすることに決める - 5週間前JavaScriptの勉強を開始
参考書で基本を復習した後、実際に自分で色々なパーツを作成
- 3週間前SQLの勉強を開始
Progateで基本を学習
- 2週間前参考書を見ながら知識詰め込み系を覚える
ウェブデザイン技能検定2級 ガイドブックを読み、出題されそうな単語とその意味をノートに纏める
- 1週間前過去問題に再挑戦
参考書に載っていない内容はネットで詳しく調べながらノートに纏める
- 3日前ノートに纏めた内容を覚えつつ、過去問に繰り返し挑戦
不正解だった問題は重点的に復習
試験まで日程的に余裕のある時期は苦手だったJavaScriptや、未習得だったSQLを学習。
試験が近づいてからは過去問題やウェブデザイン技能検定2級 ガイドブックを活用して知識詰め込み系(インターネットの仕組み・法律 etc…)に取り組みました。
毎日90分から120分ほどウェブデザイン技能検定2級の学習にあてましたが、無理なく進められたと思います。
実技試験の対策方法
実技試験では試験用PCを使用して実際にWEBサイトを作成します。
全部で5問あり、問1〜問4までは毎回同じ問題が出題されています。
- 問1: グローバルメニューに使用する画像作成
- 問2: トップに配置するアニメーションバナーを作成(指定の画像を使用)
- 問3: 問1・2で作成した画像を配置しつつ、サイトのトップページを作成
- 問4: 問3で作成したページにテキストをマークアップ
問5はaとbの選択問題となっており、どちらか一つを選んで回答します。
- 問5a: フォームページ作成
- 問5b: ボタンクリックで一部要素のスタイルを変更させる(JavaScript使用)
これらは細かい指定が毎回異なるものの、大枠は同じなのでウェブデザイン技能検定2級 ガイドブックに用意された予習問題を解いておけば問題ないでしょう。
合格ラインは学科試験と同じく70点以上ですが、試験要項に示す各作業分類において配点の60%以上の得点を得ること
、という条件が付いています。
つまり、全ての問題で60%以上を取らなければいけません。
「時間が足りなくて1問だけ未着手のまま終わってしまった!」という場合は、問答無用で不合格となってしまうのでご注意を。
事前に試験を想定した環境でシミュレーションしておこう!
学科試験と比べて難易度が低いと思われがちな実技試験ですが、油断は禁物です。
当日は会場に用意されたPCで作業を行うので、普段の環境と違いすぎて作業効率が下がることが予想されます。というか絶対下がります。
- ディスプレイが1つしかない
- Photoshopのウィンドウ設定やテキストエディタのショートカット設定がデフォルト
- 使用できるテキストエディタはTeraPad、サクラエディタ、Sublime Text、Dreamweaver(VS Codeは不可)
- エディタにプラグインの類はインストール不可(emmetやライブビューも使えない)
試験の形式上しかたがないことではありますが、何をするにも不便でした。笑
しかし「作業環境が違ったせいで時間内に終わらせられなかった」は言い訳にはなりません。
必ず、事前にいちど試験用PCを想定した環境で実技試験の過去問題に取り組んでください。(タイマーで作業時間を測るのも忘れずに!)
時間が無いという方も、最低限試験で使用する予定のエディタで「コードを整形する方法」・「行全体をコピーするショートカット」など、よく使う機能は事前に覚えておくこと!
さいごに
僕は独学でWEBサイト制作を学び、今まで多くのWEBサイト制作を行ってきましたが、どこか自分の仕事に対して絶対的な自信を持てずにいた気がします。
おそらく技術者としてコーディング以外の知識が足りないことを自覚していたのが原因でしょう。
しかし、先述のとおりウェブデザイン関連の知識を体系的に学んだことと、WEBデザイン技能検定 2級を取得した事実によって自信を持てるようになりました。
おそらく普通にしていたらJavaScriptに目覚めることは無かったので、自分にキャリアアップの可能性を与えてくれたウェブデザイン技能検定に勝手に感謝しています。笑